セイラーボブは、space-like awareness という言葉を使います。このYouTubeの中でも言っています。(1:16:00あたりぐらいから)
「空間のような意識」という意味は、そこには空間があるだけで、何かを実行する行為者はいないという意味です。行為は起こっても、行為者はいない。あなたは空間のままでいるということです。
この話をする時、次にくる話は信心銘です。「ものごとを区別しなければ、道は難しくない。でも、ひとたび区別をすると、すべては天と地ほど離れる」。要するにマインドでジャッジ(判断)するなということです。次にくるのがシェイクスピアの話で、「良いとか悪いとかいうのは人間が勝手に決めていることで、もともと良いも悪いもない」。その次がニサルガダッタの言葉で「問題は、あなたが夢の一部を好み、一部を嫌うことだ。全部を好きになるか、全部を嫌うかにしなさい」。三つとも記憶で書いているので、言い回しは正確ではないかもしれません。
私たちのマインドは、何か問題が起きると大騒ぎをして、問題を複雑にしてしまう傾向があります。もともと問題などありはしないのに、マインドがそれを問題にしてしまうのです。たいていの問題は、そのままにしておけば自然に解決します。もちろん、病気を放置せよとか、働かないでブラブラしていろという意味ではありません。
問題には対処しなくてはいけないし、今日の食物がなければ何とかしなくてはいけないのですが、解決策は自然に起こってくるから、起こるに任せるということです。例えば、普通に暮らしていれば何とかやっていけるのに、老後資金が2000万円要るとニュースで聞いて株をやって大損してみたり、健康なのに、ちょっと体がだるいからと徹底的に糖質制限して油を取りすぎて肝臓を傷めたり、ちょっと悩みがあるからと悟りを求めてカルトにはまってみたり、あ、気を悪くしないでくださいね、これ全部私のことですから。
要するに、人間のやる失敗のほとんどは自滅というか、余計なことをすることから起こるのではないかと思います。その原因は「私」がいるからです。「私」が問題をこじらせてしまうのです。たいていのことは自然に任せておけば解決します。それが、空間のような意識を自覚するということだと思います。
一年ほど前に仏教のYouTubeをあれこれ見ていた時、中村元先生のYouTubeで、とてもおもしろいものがありました。もうどのYouTubeだったか記憶がないので正確な内容ではなく、おおよその話で書きますが、ある時中村先生が人から悩み事の相談を受けたそうです。
その内容は、職場でとても嫌な上司がいるが、どう接したらよいか、というものでした。私は以前職場でこっぴどいパワハラを受けて悩んでいた時期があったので、中村先生がどう答えるのか興味津々でした。そんな職場はやめろとか、もっと上の人に相談せよとか言うのかと思ったら、「そんなことを考えていてもしょうがないじゃないですか。嫌なやつはどこにでもいるんですから」という答えでした。
私はその答えに大笑いして、妙に納得しました。そういうことなのだと思います。私たちは何か意に沿わないことがあると、それを何とか変えようとします。でも、変えることができるのは自分の態度(反応)だけです。変えようとせず、正そうとせず、起こるに任せる。
あなたは空間のような意識です。