2015/01/18

セイラー・ボブ・アダムソン・ミーティング・2015 ⑪


ボブは、私たちが見ている現実の世界を、appearance(現象、見せかけ)といい、その背景にある本当の世界を、reality(実在)と呼びます。

私たちが見ている現実は、実際には実体のないもので、本当の世界は「他には何もない一つのもの」「知性エネルギー」「純粋な意識」だと言います。別の言い方をするなら、そこにあるのは私たちの意識だけです。

ボブはよく鏡の例えを使います。私たちの意識(アウエアネス)が鏡で、私たちの見ている現実は、その鏡に映し出されたものにすぎない、それを見て私たちは、あたかもそれが現実であるかのように錯覚しているというのです。

reality(実在)の世界では、万物は分離していません。あなたも私も、犬も猫も、机も家も、すべては「他には何もない一つのもの」「知性エネルギー」「純粋な意識」の現れです。

便宜上、こういうややこしい名前で呼んでいますが、名前すら概念(ラベル)なので、そのもの自体を言い表してはいません。
万物が、「他には何もない一つのもの」「知性エネルギー」「純粋な意識」そのものなのです。

例えて言うなら、万物は大海の海のようなもの。私はその海に立った一つの波。そして他者は他の波。私という波は、他の波を見て、分離していると思っているが、実は同じ海の水。
海は「他には何もない一つのもの」「知性エネルギー」「純粋な意識」で、その中に万物は多様な形に変化して現象として現れる。

波しぶきとなって岸に打ちつけるものもあれば、水滴となって空中に飛ぶものもある。南極で氷結するものもあれば、水蒸気となって雲となるものもある。雨となって大地に染み込むものもあれば、川となって流れるものもある。

ありとあらゆる形になって変化するが、本質は同じ海の水。ところが、小さな波の一つである私は、それが同じ海の水であることに気付かず、他者と自分を分けて考えている。

実際には、私もあなたも、猫も犬も、海も山も、同じ一つのもの。
それらすべては、「他には何もない一つのもの」「純粋な知性エネルギー」「純粋な意識」です。

ではなぜ、万物はこれほど多様な変化を見せているのでしょうか。ある時ボブに聞きました。

私「なぜ知性エネルギーは、これほど多様な見せかけを生み出しているのでしょうか」

ボブ「意味なんてありません。ただそのようにあるだけです。それは始まりもなければ終わりもない。現象として見えているにすぎません。それは生まれたこともなければ、変化したこともありません」

私は説明の便宜上、それのことを「他には何もない一つのもの」「知性エネルギー」「純粋な意識」とだけ書きますが、実際ボブはもっと多様な表現を使います。ゾクチェンから引用して、「認識する空」「永遠に新鮮」「今ある意識」と言う時もあれば、単に意識(consciousness, awareness)と言う時もあります。

ボブは、万物は一つのもので、私たちも現象の一つとしての現れにすぎないと言います。私は、その事が理解できずに、何度も説明を求めました。説明の仕方は何通りもあるのですが、典型的なものの一つを書いておきます。

拓「万物が一つのものということが理解できません。また、自分はそれ(知性エネルギー、純粋な意識)だということを、どうしたら理解できるのでしょうか?」

ボブ「私という存在が、見せかけのもので、実在しないということを理解してください。そうすれば理解できます」

拓「それは知的には理解できます。自分で調べましたが、これが自分だと呼べる実在は存在しません。でも、万物が一つのもので、自分はそれなのだという実感が湧きません」

ボブ「あなたは今、見て(seeing)、聞いて(hearing)いるでしょう? それが、純粋なる知性エネルギーの働きです。ところが、あなたはマインドで何かを理解しょうとしているため、それが邪魔して見えなくなっているのです。思考が、見ている人という主体と、見られている客体を作り出します。実際には、見ていること(seeing)があるだけで、見ている人も見られているものもいません。それは一つのものです」

拓「どうしたら、マインド(思考)から抜け出せるのでしょうか」

ボブ「外を走るトラムの音に気付いていますか?(Are you aware the sound of the tram?)」

拓「音がしているのは聞こえています」

ボブ「あなたはマインドから抜け出る必要も、マインドを止める必要もありません。マインドが動いていたとしても、知性エネルギー、アウエアネス(意識)は機能し続けています。トラムの音を聞いているのはあなたの思考ではありません。それはあなたの思考とは無関係に、トラムの音を聞き、あなたの心臓や呼吸をつかさどって働き続けています。それが本当のあなたです」