その他のボブの講話の中でも、非二元を理解すると(「私」という参照点が消えて)、心理的な苦しみが消えると何度も言っています。逆の言い方をすると、ボブの教える非二元を理解して起きることは、心理的な苦しみが消えることだけだということです。
最初私は、セイラーボブの言っていることを理解したら、エンライトメントが起きるのかと思っていました。でも、セイラーボブの言っていることを理解してもエンライトメントは起きません。精神がス~っとして世界が変わるとか、一瞥体験をするとかいうこともありません。意識がシフトするとか、体調が劇的に良くなるということもありません。引き寄せの法則が働いて、お金が入ってくるとか、物事がうまくいくようになるということもありません。
教えを理解しても、こちらの側で何かが突然起きるとか、何かが変わるということはありません。セイラーボブの教えていることは、何かになることや、何かを手に入れることではありません。
私はこのブログで「非二元」という言葉を使っていますが、私の知っている非二元はセイラーボブ経由のものだけです。そのため、他の非二元の教師たちが何を教えているのかを正確には知りません。もちろん、他の人の本も何冊かは読んだことがありますが、その人たちの説く非二元が、セイラーボブの説く非二元と正確に同じかどうかは知りません。
おそらく他の人たちは、「知性エネルギー」や「参照点」という言葉を使わないでしょう。覚醒や過去生があると説く人たちもいるでしょう。ただ、「行為者の不在」「時間の不存在」など、基本的な部分が同じなら、一応は広い意味で非二元の語り部として尊重したいと思いますし、彼らも基本的には同じことを教えているのだと思っています。
セイラーボブの教える非二元は、「心理的、あるいは精神的な苦しみからの解放」だけを主眼としています。世俗的な成功法則ではありません。そのため、あまり人気がありません。毎週日曜日に生中継されるボブのfacebookのミーティングを生中継で見ている人は、毎回、15~35人程度です。翌日配信されるYouTubeの再生回数は、累積でも500~1000回程度までです。世界中でたったそれだけです。
人気のない理由はいくつかあるのですが、一番大きな理由は、ボブが毎回同じような内容の話を繰り返すので、一度理解した人はそうたびたび見ないからです。ミーティングに参加している人の顔ぶれを見ても、入れ替わりが激しく、私が通っていた頃(7~8年前)の人はほとんど見かけません。
信者となって何回も聞かなければいけないような教えではないし、数回聞けば理解できる話です。私の場合は、英語力不足、何か特別なことが起きるのだと勝手に思い込んでいたこと、長旅の途中で時間があり、メルボルン滞在が楽しかったことなどの理由により、何度もミーティングに出ましたが、今となっては笑い話です。
また、もう一つの理由は、幸せに暮らしている人はボブのところへは来ないからです。人生が順調にいっていて、悩みもなく幸せなら、ボブのミーティングに参加して「あなたは実在しない」なんていう話を聞く必要はありません。人生が順調にいっている人たちが、もし何かのセミナーや教えに惹かれるとしたら、その幸せがもっと長く大きくなるような教え、言うならば、世俗的な成功法則のようなものに惹かれるはずです。ロンダバーンの本はメルボルンやシドニーの本屋で見かけましたが、セイラーボブの本は見たことがありません。
ボブが教えていることは、心理的・精神的な苦しみからの解放だけです。ボブの教えを理解しても、心理的な苦しみが終わるだけなのです。実際にはそう簡単にはいきませんが、ではどうして心理的な苦しみが終わるのでしょうか?
苦しみの根源である「私」は存在しないと知るからです。苦しみを「私」と結びつけている参照点が消えるからです。すべての問題の根源である「私」が消えるからです。極端なことを言えば、私が死んだらすべての問題はなくなります。でも、自殺しなくても、思考の「私」は死ぬことが可能だと教えているのです。それは、もともと生まれてさえいないと教えているのです。
ではどうやったらいいのか。
ボブは、エクササイズや瞑想を説きません。また、具体的な方法を教えるようなこともしません。せいぜいボブが教えるのは「フルストップ!」と「『私』が実在かどうかを何度も何度も調べる」ことだけです。
私の場合、「私」が完全に消えたわけではないし、苦しみも時々はやってきます。このブログを読んでいただいている人の多くも、具体的に非二元を生きるにはどうしたらいいのかと思ってみえるかもしれません。
「私」は実在ではない、ということを、日々の生活に活かしたり、具体的な悩みや苦悩にどう適応したりしていくかは、それぞれ個人にかかっていると思います。悩みや苦悩が多様なように、その対処の仕方も人それぞれだと思います。
私の場合、何か問題や苦しみが起こった時にやることは、「フルストップ!」と言って思考を止め、「私」が実在かどうかを何度も何度も調べることだけです。それで問題や苦しみが消える場合もあるし、少し和らぐだけの時もあります。
私たちは、心理的な苦しみから逃れるために、エンライトメントのような手軽で夢のような方法があったらと夢見るのですが、そんなものはないということは、少し考えればわかりそうなものです(私は30年以上もわかりませんでしたが)。心理的な苦しみを解消するためには、その苦しみを見つめ、それが実在なのか、誰が苦しんでいるのかを調べる以外に方法はないのだと思います。
非二元の教えを理解するのは難しいことではありません。でも、それを生きることは、そんなに簡単なことではないと思います。セイラーボブの教えを聞いた人すべてから、たちどころに心理的な苦しみが消えるなら、評判が評判を呼び、もっとたくさんの人が教えを聞きに押しかけてもいいと思うのですが、そうはなっていません。
教えが理解できないということではありません。ほとんのどの人が教えを理解します。でも、その教えに懐疑的な人もいます。また、それが真実だと思った人でも、心理的苦しみから解放されない人は大勢います。何が足りないのかといえば、「私」が実在かどうかを何度も調べることが足りないのだと思います。それが、非二元を生きるということです。そうした作業をしていく中で、苦しみが消えていくのだと思います。
私は今現在平穏に暮らしていて、もう何も探していませんし、以前ほどの心理的な苦しみもありません。でも、いつどんなことが起きるかは誰にもわからないことです。何か予期せぬことが起こった時、苦境におちいった時こそ、自分が非二元をちゃんと生きているのかわかる時だと思います。
私たちは、「私」、分離した存在、個人であるという催眠にかかっています。それは繰り返し繰り返し学ぶことによって強化されてきました。名前、性別、自己の役割…、そうしたことは繰り返しによって学んだものです。それが一夜にして消えることはありません。それを理解することは瞬時にできますが、習慣化された古いパターンは繰り返しやってきます。というのも、パターンは繰り返しだからです。それから抜け出すことも同じようにして起こります。何度も何度も再認識してください。(SAILOR BOB: Bags of pointers to nondualityp262より)
あなたはその体であると、何度言われたことでしょう? もっとも効果的な学習方法は繰り返しによって学ぶことです。今、あなたは真実を見抜き始めていますが、世界全体があなたを幻影の中に連れ戻そうとしています。真実を見抜き続け、それを繰り返すことによって、それはあなたのものとなるでしょう。今、幻影があなたを明晰さから連れ出すかわりに、幻影を明晰さの中へ引き込めば、真実があなたの中で強化されるでしょう。(SAILOR BOB: Bags of pointers to nondualityp263より)