2022/10/29

修行、あるいは座禅

佐々木閑先生のYouTubeの話が、仏教における修行の話に入りました。佐々木先生は他の動画でも言ってみえるのですが、仏教は修行によって自己を変えていく教えなのだそうです。その方法として、精神集中やマインドフルネス瞑想などをあげてみえます。

横田南嶺老師は円覚寺(禅宗)の管長ですから、当然座禅こそが仏道の基本だと説かれています。座禅することによって、自分は実在ではないということを体得するのだそうです。

セイラーボブは、瞑想は推奨しておらず、日常的に思考に気づいているという、「間断なき瞑想ならざる瞑想」というのを説いています。

私は、個人的には三人のおっしゃっていることは全然矛盾なく受け入れていて、瞑想も座禅も間断なき瞑想ならざる瞑想もありだと思っています。

セイラーボブは厳格な非二元の教師なので、瞑想することは時間の観念を持ち込むことになる、と言って推奨しません。でも、その一方で、何度でも自分がいないということを調査することによって条件付けの解除がなされるとも言い、自分が実在ではないということが身に染みるには時間がかかると言っています。

気をつけなくてはいけないのは、セイラーボブが現象の世界(私たちがマインドを通して見ている世界)の話をしているのか、それとも実在の世界(非二元の世界:私たちが見ることのできない世界)の話をしているのかということです。実在の世界には時間はないのだから、将来何者かになろうとする瞑想は無駄だと言う一方で、現象の世界で条件付けを解除するためには何度でも自分は実在ではないということを調べなさいと言っています。

「私は在る」と「私は実在ではない」という話も同様です。実在の世界では私はいない。でも現象の世界では私は在る(私はいる)。私は最初、「私は在る」(I AM)がどういうことなのか理解できませんでした。

「私はいないはずなのに、どうして私は在る(I AM)のか」とボブに質問したところ、存在(実在)が「私が在る」という感覚となってマインドに現れているというのです。私は在る(I AM)は、存在の感覚(自分が存在するという感覚)であり、それがマインドで行ける最高地点だと教えてくれました。要するに、「私は在る」(I AM)は現象の世界でマインドが感じることであり、「私はいない」は実在の世界の話です。実際には「私」はいないのですが、いるような感じがするという意味であり、それが実在を感じるということです。(「ただそれだけp112あたり参照)

ですから、マインドの世界では、「私は在る」(私はいる)のです。その「私は在る」を超えたところが私のいない非二元の世界なのですが、それを私たちが体験することはできません。また、それがどういうものかと認識することもできません。私たちの意識がそれの現れなのですが、だからといって、意識が何のかをはっきり言うことはできません。

要するに、非二元の話は、実在の世界と現象の世界があって、それがパラドックスになっているのです。一方では瞑想は時間の観念を持ち込むものだから役に立たないと言っておきながら、一方では何度も自分がいないと調べなさいと言います。

座禅や修行と非二元の教えも、この関係にあると思います。実在の世界(非二元)の世界では私たちは完全な一つのものであり、修行も瞑想も不要です。でも、現象の世界(マインドを通して見た世界)にはマインドがあり、それを修行や座禅によって克服していく道があります。私としては、どちらも矛盾なく受け入れることができます。

佐々木先生も横田老師も、「私はどこにも実在しない」と説いておきながら、その一方で精神集中や座禅を推奨するという、非二元と同じパラドックスを抱えているのが面白いですね。セイラーボブは「行為は起こってくるが、行為者はいない」と言い、横田老師は「無我を体得するために座禅する」と言います。もともと無我なら座禅しなくてもいいような気もしますが、それを知るためにやるというパラドックスです。

私は瞑想も座禅も卒業しましたが、それが無我を体得する方法だという仏教の教えも否定しません。でも、このブログ上では、仏教の修行は取り上げません。そこへ入っていくと、宗教が全面に出てしまうことと、いろんな方法がある上、個人差のある体験の話になって、収拾がつかなくなってしまうからです。このブログは、修行ではなく、あくまでも理解(科学・哲学・思想)を主題にしています。

一年以上仏教について書いてきましたが、ちょっと仏教へ入り込みすぎたかなと思う今日この頃。あやうく出家するところでした。仏教関連のYouTubeをあれこれ載せすぎて、かえってわかりにくくしてしまった気もします。

そろそろセイラーボブに戻る時期がきたようです。もちろん、佐々木先生や横田老師のYouTubeで非二元的なものがあればこれからも掲載させていただきますが、セイラーボブ中心でいきますので、よろしくお願いします。