以前こブログで書いた「人は自己を変えることができるのか」(円覚寺の横田南嶺老師の法話)の中で、佐々木閑先生の話を紹介して、「最後に無我ということは、今日の脳科学でも証明されていると教えてくださいました。下條信輔先生の説を紹介して、「私」という固まった確固としたものはないというのであります。例えば、記憶というものを積み重ねることによって、私たちは自分というものを形成していますが、記憶というのはほとんど後付けでできているというのです。自分の都合のよいように作り変えているのだそうです。これという固まった自我がないことは脳科学でも実証されているということでありました。」と言ってみえたので、下條信輔さんの本を読んでみました。
結論から言うと、佐々木閑先生の話に出てきたような説が書いてある下條さんの本はを見つけることができませんでした。「私は幻想である」や「世界が幻想」であるというような話もありませんでした。下條信輔先生は知覚心理学、認知神経科学の研究者であり、カリフォルニア工科大学生物学部の教授です。わかりやすく言うと、脳が物をどういうふうに認識しているかを研究してみえる方です。
非二元の参考になるようなことがあるのかと思って読んだのですが、残念ながら、非二元と関連づけるにはちょっと無理がある内容の本ばかりでした。どれもみな学術的な本であり、読むのに骨が折れる内容ばかりです。三冊に共通して言えることは、私たちの脳は、顕在的に私たちが知っている知識や物事だけでなく、潜在的な部分があって、それに基づいて知らず知らずのうちに物事を判断しているという内容でした。それを無我と関連づけるのはちょっと無理でした。
視覚の冒険 下條信輔
物の見え方に関する研究の本。人間の脳は、実際に目で見ている情報以上にいろんなものを補ってもの見ているということを、様々な図形、実験で示している。
サブリミナル・マインド 下條信輔
人間が物事を認識したり判断する場合に、顕在的な意識でものごとを判断していると思っているが、実はそうではなく、多くの場合、潜在的な意識で判断をしていて、あとから理由付けをしているということを様々な実験から説明している。ただ、その実験の説明が難しくてよく理解できない。
サブリミナル・インパクト 下條信輔
潜在的な認知の能力が人間の行動に影響与えている。コマーシャルや報道がいかに潜在的な認知に訴える手法で行われているかなどを説明してある。
まだ読んでない本として、「意識とは何だろうか」があるのですが、アマゾンの試し読みで読むかぎりでは、どうも非二元と関連なさそうなので食指が動いていません。佐々木先生の話の出典となる本があればまたこのブログで書きたいと思います。