2023/10/31

「ザ・グレイテスト・シークレット」ロンダ・バーン

前回からの続き。

ザ・グレイテスト・シークレットを読みました。結論から先に言うと、この本は紛れもなく非二元の教えについて書かれた本です。そして、ロンダ・バーンは、「ザ・シークレット」も「引き寄せの法則」も否定しておらず、それはそのままで自説を曲げてはいない。「引き寄せの法則」の上に、もっとグレイトな秘密として非二元の教えがあるというのです。ただし、ロンダ・バーンは、この本の中では「非二元」「ノンデュアリティ」「アドヴァイタ」という言葉は一切使っていません。それは、ザ・グレイテスト・シークレット。勝手に訳すと、最も偉大な秘密なのです。

本の紹介のため、冒頭部分を少しだけ引用させていただきます。黒字は引用部分。

p17
はじめに
 2006年に『ザ・シークレット』を世に送り出してからというもの、私は夢という言葉でしか言い表すことのできない人生を歩んできました。『ザ・シークレット』に書かれた原則の数々を心から実践し続けることで、私の心は考えられないほどポジティブになり、そのポジティブな心が日々の幸せに、健康に、人間関係に、そして経済面にも表れるようになりました。そして気づけば、自分を取り巻くあらゆるものに、心からの感謝を抱くようにもなっていたのです。
 それでも胸の中で何かが、真理をもっと探究しなさいと私をずっと駆り立て続けていました。私自身まだ何を探せばいいのかもわからないというのに、私の背中を押していたのです。
 私は自分でも知らないうちに、10年の旅路に続く道へと歩み出しました。はじまりは古代ヨーロッパの伝統、薔薇十字団の教えを学びはじめたことでした。何年にもわたり、私は薔薇十字団の深淵な教えの数々学んでいたのです。それだけでなく、仏教、キリスト教神秘主義、神学、ヒンドゥー教、道教、イスラム教神秘主義も長年かけて学びました。そうして古代の伝統と歴史に残る教えの数々を学んだ私はふたたび今の時代へと立ち返り、J・クリシュナムルティ、ロバート・アダムス、レスター・レヴェソン、ラマナ・マハルシなど近代の賢者たちや、現代を生きる賢者たちの教えを学びはじめました。(引用おわり)

そして2016年に、デーヴィット・ヴィンガムという人物と出会ったことで、彼女の10年間の探求は終わります。その後も彼女は様々な人から教えを学び、それをもとにして、この本を書きあげます。

本の内容は、彼女が様々な人から学んだことを12章からなる文章で説明していきます。主となる説明はロンダ・バーンの言葉で説明され、それを補完する形で、様々な人の言葉が引用されています。形式としては「ザ・シークレット」と似たような形式です。各章の最後には、「ザ・シークレット」の時と同じように、その章のまとめがあって、わかりやすい言葉で説明されています。

本の中の太字で書かれている題目から、いくつか選んで引用させてもらいます。

p35
あなたは肉体ではない

p37
あなたはマインドではない

p39
本当にあなたは自分が考える自分自身だろうか?

p43
大胆ななりすまし屋

p50
あなたは、すべてに気づいている意識

p54
マインドという覆い

p69
意識で在り続けるために(ここでは、意識で在り続けるためのプラクティスが説かれています)

p72
ステップ1:「意識がありますか?」と自分に訊ねてみる

p87
覚醒する(エンライトメントという言葉はなく、例えば、「私たちではないものから覚醒する」というムージの言葉が引用されています)

p102
トラブルの源を信じてはいけない(トラブルの源とはマインドのことです)

p186
意識は幸せと同じ

p187
外界に幸せは存在しない

p218
すべては意識

p220
世界映画(意識は世界を投影するスクリーンであると説いています)

p242
終わりなどないのです(私たちは永遠の意識)

この太字の部分を読むだけでも、非二元の教えそのものだと思いませんか? でも、彼女は非二元という言葉は一切使っていません。非二元よりも、もう少し大きな枠組みでとらえています。というのも、引用する人たちが、必ずしも非二元という枠組みで語られる人たちばかりではないからです。

この本の巻末には、「賢者たち」として、言葉を引用した主な人たちや団体など、30人以上のリストとその説明が掲載されていますが、その人たちは、必ずしも非二元という枠組みには納まらない人たちも入っています。

私が知っている、もしくは聞いたことがある人の名前を挙げると、
セイラー・ボブ・アダムソン、
ディーパック・チョプラ™医学博士、
ジョエル・S・ゴールドスミス、
バイロン・ケイティ、
J・クリシュナムルティ、
ピーター・ロウリー、カリヤニ・ロウリー、
ラマナ・マハリシ、
ムージ、
スリ・プーニャ(パパジ)、
ルーミー、
ルパート・スパイラ、
エックハルト・トール、
ウパニシャド、
アラン・ワッツ、
バラマハンサ・ヨガナンダです。
この他にも20人ほどの名前がありますが、私はその人たちの名前を聞いたことがありません。

このブログは、あくまでもセイラーボブのことを中心に書いているブログなので、リストの中から、セイラーボブとカリヤニ、ピーターの部分を引用させていただきます。光栄なことに、セイラーボブは、その「賢者たち」のリストの最初に掲載されています。

セイラー・ボブ・アダムソン
 セイラー・ボブ・アダムソンはオーストラリア人で、私のふるさとであるメルボルンに住んでいます。私が彼を知ったのは2016年、私たちの真の姿に気づいたあとのことでした。当時私はアメリカに住んでいたのですが、その何年も前にまだメルボルンに住んでいた当時、通勤のために毎日毎日、何年にもわたり、セイラー・ボブの家の前を通っていました。まさか、将来自分の人生にとって重要な役割を果たすことになる自己実現の導師の自宅を車で通り過ぎていたなどとは、思いもよらなかったのです。2016年にセイラー・ボブのことを知った私は、すぐに彼に会おうと飛行機に飛び乗りました。彼はもう80代になっていましたが、私は何度か彼のセミナーに参加し、一対一のセッションを持つこともできました。そして彼に会うたびに気持ちが軽くなり、幸せが増し、解放感が増えていったのです。まだ私はスピリチュアル的に覚醒しはじめたばかりで、今はもうはっきりと理解していることをなんとか把握しようと必死になっていました。セイラー・ボブがニサルガダッタ・マハラジの弟子としてインドで自分の本質に目覚めたのは、もう数十年も前のこと。それ以来ボブは真実を聞きたいと願う人々に、自宅から彼の教えを教え授け続けてきたのです。今は90代になっていますが、まだ自宅でセミナーを開催し続けています。「今それを考えるのをやめて、何か問題があるかね?」という彼の言葉ほどシンプルで重要なものは、そうありません。セイラー・ボブは『今何か問題が?(What's Wrong With Right Now?)』『存在と意識:ただこれがあるだけ(Presence-Awareness: Just This and Nothing Else』という本を出版しています。また、彼のウェブサイトを見れば、彼のことをよく理解できるでしょう。sailorbobadamson.com

ピーター・ロウリー、カリヤニ・ロウリー
 ふたりは、私のふるさとであるメルボルンに住む、オーストラリア人の夫婦です。長年の壮絶なスピリチュアルの探求とインドへの旅を経て、ピーターとカリヤニはふたりとも自分の本質に覚醒しました。そろって覚醒する夫婦は非常に珍しいのですが、おかげでふたりがメルボルンで開くセミナーは本当に特別なものになっています。数年前にメルボルンを訪れた私はふたりのセミナーで、人生が変わるような体験をしました。そして幸運にも何度か、カリヤニと電話でのセッションを持つ機会にも恵まれたのです。ふたりの本『宝石の輝き(A Sprinkling of Jewels)』『ただそれだけ(Only That)』(邦訳はナチュラルスピリット)は、カリヤニの執筆によるものです。詳細はウェブサイトにて。nonduality.com.au

正直なところ、この本を読んで、どう評価していいのかわかりませんでした。これは、まぎれもなく非二元の教えについて書かれた本だと思います。わかりやすくて、内容もいい。具体的にどうしたらいいのかというプラクティスも書いてある。一部、引き寄せの法則と絡めて語られる部分があったりして、全面的に賛同するわけではありませんが、ずいぶんと参考になることがありました。

ちなみに、この本の中では、ざっと数えたところ、セイラー・ボブ、カリヤニ、ピーターの言葉がそれぞれ5回ずつ引用されています。もちろん、ニサルガダッタ・マハラジからの引用もあります。大半の引用はわかりやすく、すばらしいものです。ただ、一見非二元とは関係ないと思われるものもあります。

昔からある教えなのに、大げさなタイトルをつけて、こんなに多くの人の言葉を引用して、あざといではないか!と、私の中のひねくれ爺さんがつぶやきました。でも、ロンダ・バーンは、掲載された人の多くに会っているし、何度もセミナーに出たり、可能なかぎりの資料を読んだりして、ちゃんと体験、理解して書いています。もちろん、そうした人の了解も取っていることでしょう。

引用されている人の中には、私的には疑問を感じる人もいます。でも、私はその人たちの本を少しかじった程度の知識しかなく、会ってもいないので、偉そうなことは言えません。また、そうした人たちの言葉もすばらしいものなので、どうしたものかと困ってしまいます。

もっと困るのは、「引き寄せの法則」は自由意志にかかわる問題であり、非二元の教えの根本は、自由意志はないという点です。ロンダ・バーンは、「引き寄せの法則」は真理であるといい、その上にもっと偉大な秘密があると言って、この本を書きました。この本の中にも、「引き寄せの法則」について述べる箇所が何か所も出てきます。大前提が矛盾している気がしてなりません。

釈然としない思いをカリヤニにメールしたところ、カリヤニの答えは明快でした。カリヤニはロンダ・バーンの「ザ・シークレット」は読んだことはないけれども、「ザ・グレイテスト・シークレット」にカリヤニの言葉や名前が出たおかげで、何人かの人から連絡があり、まったく非二元を知らなかった多くの人たちを非二元に導いたのだから、それでいいのだということでした。

過去一年ほどの間、セイラー・ボブのミーティングのYouTubeを見ていて思ったのは、アメリカやヨーロッパからやってくる人が以前より多いような気がするということでした。今では、アメリカとヨーロッパ向けに時間をずらして、それぞれズームミーティングをやっています。ひょっとすると、この本のせいかもしれません。この本は、世界中で、ものすごい数の人に読まれているはずです。

カリヤニの話を聞いて、ロンダ・バーンに対する評価が変わりました。ロンダバーンは、非二元とは無縁の人たちを、非二元という言葉は使わないにしても、非二元的な教えに目を向けさせたということで、その功績は大きいのではないでしょうか。また、セイラーボブや、カリヤニ、ピーターのことを的確に理解していて、好意的に書いているところも好感がもてます。

私がこの本で一番感心したのは、非二元の教えの理解というのは、ともすると、特別な人にしか起きない神秘的な出来事(例えばエンライトメントのようなもの)としてとらえてしまう傾向がありますが、ロンダ・バーンはそういうものとしてはとらえておらず、誰にでも理解できる教えとして書いているところです。

そしてまた、私たちの本質は意識であり、それは手に入れたり、何かになったりするものではなく、すでにあるものだということをちゃんと書いているところです。この本の非二元(あるいは非二元的教え)は、一般の人にとっては、例えば、「I AM THAT」や「ただそれだけ」よりもはるかにわかりやすいと思います。

非二元の教えはスピリチュアルの分野でもマイナーな教えで、それほど多くの人に興味を持たれている分野ではないと思います。でも、ロンダ・バーンのおかげで、徐々に一般の人に広がっていくかもしれません。

非二元の教えを理解した人の中には、世界は幻想や夢だと知って厭世的になる人もいるかもしれません。幻想や夢だと理解したうえで、この世界の中で、引き寄せの法則はあると思って、希望に満ちて生きることは悪いことではないし、願望が実現した人にとっては、引き寄せの法則はあるということになると思います。

あれこれと書きましたが、非二元の本をあれこれ読んだけど、非二元で教えていることが何なのかよくわからないという人には、この本がわかりやすいかもしれません。とりあえず引き寄せの法則は脇に置いておいて読んでみてください。あ、新品なんか買わなくていいですよ。そんなことをすると、また印税が彼女に入って、ほら、引き寄せはある、と言いかねません。

ただ、一言だけ言わせてください。「ザ・グレイテスト・シークレット」の裏表紙には、ロンダ・バーンの写真が載っています。この本を書いた時点で、ロンダ・バーンは70歳のはずなのに、それがどう見てもせいぜい30代か40代にしか見えない。しかも美しい。その15年前に書かれた「ザ・シークレット」の写真より若く見えるやないか! 若さも引き寄せたと言うのか!と、また余計なことを書くと、しかられる。でも私の中のひねくれ爺さんがどうしても書けという。
ロンダ・バーンは変節漢ではない。変節漢とは私のこと。