木 幸田文
木にまつわるエッセイ。
幸田文さんの随筆が名作だと聞いたので読んでみた。確かに文章は独特で、名文なのだと思う。でも、あまり感じるものがなかった。幸田さんは、もともとは山に登ったりする人ではなかったらしいが、晩年になって木に興味を抱き、各地の名木を尋ね歩く。
北海道のえぞ松の倒木更新や屋久島の縄文杉を訪ねた話など、十五の随筆からなる。ひとつ気になったのは、営林署などの公的な機関の人たちのお世話になって、通常では行けない奥深い山まで連れていってもらっている点。しかも、中にはおんぶまでしてもらって行っている。高名な作家だから許されるかもしれないが、普通の人だったらありえない。
崩れ 幸田文
もともとは、昭和五十一年に月刊誌「婦人の友」に掲載された十四回にわたるエッセイ。安部川の大谷崩れや富士山の大沢崩れ、立山の鳶山の崩壊など、有名な山崩れ、地すべり現場などを毎月訪問する。
なぜ幸田さんは七十歳を超えてから山崩れに興味を持ったのだろう。そして、なぜ自分の足では行けない山奥の山崩れを、人におんぶしてもらってまで見に行ったのだろう。しかも、場所によっては一年を通して見ておかなくてはいけないといって、年に何回も行っている。ただただ崩れを見に行ったという随筆であり、治山事業の良し悪しや、人が山も管理することの問題点などについては触れていない。
果ては噴火したばかりの有珠山へも行っている。でも、その視点はただ単に災害現場が見たいという動機にすぎない。それでいて、雑誌社経由でお役人に手をまわし、案内ガイド付き。こんなわがままを言って建設省や営林署や役場の人にあちこち案内してもらえるなら、私も連れていってほしい。
動的平衡3 福岡伸一
動的平衡2まで読んだので3も読んでみた。相変わらず専門分野の遺伝子の話はよく理解できない。がん治療の話やベネチアの水道の話は参考になった。その他のエッセイは興味深いことやためになることがいっぱいあるが、2、3と続くうちに、だんだんおもしろくなくなってきたかなぁ。
海鼠の日 角川春樹
句集。音読用。角川さんはとんでもない人かもしれないけど、俳句には惹かれる。
冬の夜やどこか壊れている私
元日の獄舎静かに暮れにけり
泣きしあと妻が眉描く春の暮れ
十薬の花誰からも愛されず