胡蝶の夢( 一~四) 司馬遼太郎
あい 永遠に在り高田郁を読んで関寛斎に興味を持ち、胡蝶の夢に関寛斎のことが出てくるということで読んだ。関寛斎がなぜ最後に自死を選んだのかもおぼろげながらわかった。
私はもともとノンフィクション系の本が好きで、小説はそれほど読んでこなかった。でも、この作品に関してはノンフィクションと言っていいほど資料や史実に裏打ちされていて、登場人物のドキュメンタリーを読んでいるような感じがした。一体どれほど調べればこんな小説が書けるのだろうか。司馬遼太郎こそが私が探していた小説家なのかもしれない。
話は徳川幕府崩壊期の幕府の医者である松本良順、農民から苦学して医者になった関寛斎、並外れた記憶力を持ち、数か国語を習得した伊之助を中心にした話。幕末のことや佐渡のこと、長崎や陸別のこと。新選組。慶喜。そして医学とは何か。いろいろ考えさせらた。まったく素晴らしい。
ランドセル俳人からの「卒業」 小林凛
小学生の頃からいじめにあい、転校、不登校を経験。まだ21歳の大学生の俳句・エッセイ集。いい句がいっぱい。
いじめ受け土手の蒲公英一人つむ
寺山修司の俳句 マリンブルーの青春 寺山修司
難解な俳句が多くてイマイチ。
へたも絵のうち 熊谷守一
これはおもしろかった。熊谷守一は自分の気持ちに正直に生きた人だと思う。東京美術学校(現東京芸大)を主席で卒業しておきながら、40歳ぐらいまではまったく絵では世に出ていない。その間、友人の援助で生計を立てたり、郷里の岐阜県付知町で馬の世話をしたり、山仕事をしたりして暮らしていた。
ふたたび上京して家庭を持ってからも、寡作で貧乏生活をおくる。それでいて、あくせくしたところがない。友人も多く、人望もあつい。絵を描いて成功しようなとどは微塵も思っていない。作品も4号から6号の大きさのものが大半。やがて絵で食っていけるようになるが、生活のスタイルを変えることなく寡作で、好きなように生き、97歳で亡くなる。文化勲章を辞退しているし、名声や金には興味がなかった。
この本は、日本経済新聞に口述で連載されたものをまとめたものだが、熊谷の人柄がでていておもしろい。こんな人に出会えば誰でも好きになってしまう。絵ばかりでなく、書もすばらしい。
自足して生きる喜び 中野孝次
物にあふれかって生活する現代において、どう生きるのが幸せなのかを教えてくれる。中野孝次のエッセイは内容的にはどれも同じことを言っているが、どれを読んでも飽きないし、毎回なるほどと思う。ということは、依然として私は「欲望を追う」生活をしているということになる。欲望を追わないで生きていきたい。中野孝次はこの先ずっと読んでいく。
出世花 高田郁
まったくすばらしい。文句なし。
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不義密通の大罪を犯し、男と出奔した妻を討つため、矢萩源九郎は幼いお艶を連れて旅に出た。六年後、飢え凌ぎに毒草を食べてしまい、江戸近郊の下落合の青泉寺で行き倒れたふたり。源次郎は落命するも、一命をとりとめたお艶は、青泉寺の住職から「縁」という名をもらい、新たな人生を歩むことに―――。