翻訳家の夏目大さんがYouTubeで、「翻訳をする人の必読書三冊」として紹介してみえるので、その三冊(文章読本 (中公文庫)・翻訳語成立事情 (岩波新書 黄版 189)・理科系の作文技術(リフロー版) (中公新書))を読んだ。
文章読本 (中公文庫) 谷崎潤一郎
驚いたのは、谷崎潤一郎は作品によって文体や句読点の打ち方を意図的に変えているということ。
ある小説ではひらがなを多用したり、ある小説では句読点をあまり打たないようにしたり、逆に頻繁に打ったりしているという。そんなことまでして小説を書いているとは知らなかった。
参考になった点は句読点の打ち方。読み手が一息ついて欲しいところに打っているという。この点は多いに納得。
それと、私はこのブログで文章を翻訳して載せているが、本来訳さなくてもよい代名詞や指示代名詞を訳しているということがよくわかった。この本は多いに参考になた。
この本は驚くことばかり。私たちが日常で何げなく使っている言葉の中に、明治以前には日本語になかった言葉がたくさんあり、それは翻訳によって新しく作られた言葉だという。
たとえば、「恋愛」「社会」「個人」「美」「自然」「権利」「自由」「彼」「彼女」。
たとえば、「恋愛」「社会」「個人」「美」「自然」「権利」「自由」「彼」「彼女」。
そして、その訳語が、本来の英語とズレていて、そのまま今でもズレたまま使われているという。
たとえば「恋愛」とは何だ?と聞かれても何となく理解はしているが、はっきりとは説明できない。「社会」なんてもっとわからない。こうした言葉は、翻訳されて何度も何度も目にするうちに、「だいたいこういう意味で、こういう状況で使われる」という暗黙の了解ができてみんなが使っているだけで、実はよく意味がわかっていないという。「自由」などは、日本語では「俺の勝手だ」という意味で「俺の自由だ」と言うが、もともとの"liberty"にはそいう意味はなかったという。
それと、セイラー・ボブのブログの中で『I Am That 私は在る』の「私は在る」という訳はおかしい、「私はいる」が正しいのではないかと書いて覚えがあるが、この本でも同じことを言っていて、「私は在る」は日本語としては間違いだという。
私は存在するという訳から、私は在るという訳になったのではないかと筆者は指摘している。この本も多いに参考になった。
この本は理系の報告書を書くときのテキストとして100万部以上売れているそうです。例として引き合いに出されているものの多くが理系の研究報告のようなものが多く、ついていけない部分が大半。個人的にはあんまり参考にならなかった。
以上の三冊はある程度参考になったのですが、これを読んだからといって、技術的に文章や翻訳が上手になるということはないような気がします。私が今まで読んだ作文の技術に関する本では、本多勝一さんの日本語の作文技術が一番良かったです。
翻訳関連では安西徹雄 翻訳英文法ー訳し方のルールと翻訳英文法トレーニング・マニュアルが良かった。
翻訳に関して言えば、夏目大さんのYouTubeがとても参考になります。夏目さんは翻訳学校の先生もやってみえます。
翻訳に関して言えば、夏目大さんのYouTubeがとても参考になります。夏目さんは翻訳学校の先生もやってみえます。
あれこれの本を読んでいるうちに、久保田万太郎の句がいいなあと思って買ってみた。座右の書にして少しづつ読むつもり。座右の書が増えてきて、困ったな~。断捨離派ではなくなりつつある今日この頃。ささやかな欲望に捕らわれつつある今日この頃。
一句載せておきます
神田川祭の中をながれけり