わが夫 坂本龍馬 一坂太郎
坂本龍馬の妻おりょうが、龍馬の死後30年以上後に語った二種類の談話録を現代語訳にして解説をつけたもの。
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読んで、実際の龍馬はどんな人だったのかと興味が湧いて読んでみた。結果として、龍馬がどんな人だったのかはよくわからなかった。一方で、おりょうがどんな人だったかはよくわかった。問題は、おりょうが龍馬の妻となって過ごした期間は、おそらく三年ほどの期間でしかないうえ、その大半で龍馬はあちこち出歩いていて、一般的な夫婦生活を営んでいないこと。しかも、それを30年以上たってから妻側から語ったものであるということ。
そもそも二人の出会いや、馴れ初めなどは話していない。龍馬の死後、おりょうがどんな人生をたどったのか、龍馬のまわりの人がどう接したのかはよくわかったが、そこはあんまり興味がなかった。この本の表紙になっている、おりょうの若い頃の写真というのも大いに疑問。ものすごい美人だったということになっているが、個人的には・・・
新説 坂本龍馬 町田明広
歴史学者である著者が、龍馬の実像とはかけ離れた伝説の真偽を、様々な資料をもとに検証した本。
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『あなたの知っている坂本龍馬、フィクションではありませんか?
龍馬の名は、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』など伝記小説から広まったため、実像と離れた「伝説」が生まれ、今なおそれが通説となっている。
歴史学者が丹念に史料を読み解くことでわかった龍馬の実像とは⁉
龍馬は薩摩藩士? 薩長同盟に龍馬は無関係? 亀山社中はあったのか? 大政奉還は龍馬のアイディア? など、新知見が満載。
「英雄フィルター」を外してみれば、龍馬の真価が見えてくる。』
*****以上アマゾンの本の説明から転載。
司馬遼太郎の描く竜馬は、あまりにもかっこいい。どこまでが真実なのだろうかと思いながら「竜馬がいく」を読んでいた。ネットなどで調べると、司馬遼太郎の持つ歴史観(司馬史観)に異を唱える人が結構いる。幕末、明治の小説に登場する人物を、過度に美化して描いているという意見がある。
この本では、龍馬がやった伝説のいくつかは事実ではないのではないかと指摘している。例えば、長州藩に薩摩藩名義でグラバーから武器や軍艦を買ってやったのは、龍馬ではなく、近藤長次郎だという。また、亀山社中は存在しなかったこと、薩長同盟も龍馬はそれほど深く関わっていなかったことなど。
「竜馬がいく」では、海援隊は龍馬がオーナーのように書かれているが、実際には雇われ隊長で、土佐藩の許可のもとでやっていて、ずいぶんと印象が違う。
歴史小説を読む時に注意しなくてはいけないのは、あくまで小説だということ。小説である以上、作家の歴史観が入るし、時には史実ではないことを創作して読者を楽しませようとするということ。それを差し引いたとしても、やっぱり坂本龍馬はすごい人だったことにはかわりはないし、「竜馬がいく」はすばらしい小説だと思う。
岩崎弥太郎と三菱四代 河合敦
これはおもしろかった。岩崎弥太郎と、その後の三菱が発展していく様子がよくわかった。岩崎弥太郎と土佐藩の関係、海援隊との関係がよくわかる。「竜馬がいく」での岩崎は、それほどの人物でもなく、それほど活躍していないかのように描かれているが、実際はそうではなく、重要な働きをした人物だということがわかる。
土佐の貧乏郷士に生まれ、苦労しながらも成り上がって、一台で巨大海運会社を築き上げた。その後を継いだ三代の子孫がまたすばらしい。彼らは決して私利私欲で会社を大きくしたのではなく、国家、人々の発展のために尽くした人たちだとわかる。
UFJ、郵船、東京海上、キリンビール、ニコン、エネオス。数え上げたらきりがないほどの関連会社の基を築いた人たち。まったくおもしろかった。
燃えよ剣 司馬遼太郎
新選組副長土方歳三の物語。まったくすばらしい。土方歳三はとてもイケメンだったのですね。唯一残されている写真(函館時代の洋服姿のもの)を見ると、そのイケメンぶりが偲ばれる。物語としてもおもしろかったし、歴史の勉強として読んでも興味深い。
函館で最後まで残った幕府軍の幹部は最後には降伏するが、土方だけは最後まで戦って死を選ぶ。降伏した人たちは、その後新政府の要職につくが、土方だけは自らの美学を最後までつらぬいて死んでいった。なんと壮絶な生き方。新選組に対して抱いていた悪役のイメージが消えた。人の生き方はそれぞれであり、それを善悪で判断するのではなく、何を考え、どう生きるべきかを考えさせらる。
驚いたことに、司馬遼太郎はこの小説を連載するかたわら、「竜馬がいく」も連載していたという。同じ時代の人物を違った角度から描いている。一方は日の当たるヒーローであり、もう一方は戦うことの美学ばかり考えていた男。人の一生というのは、本人の意思とは関係なく、起こっていることなのだと改めて思う。写真だけで比べるなら、圧倒的に土方の方がかっこいい。何も比べる必要はないけれども。
なにか、わたしにできることは? 寺田真理子/翻訳
翻訳家の寺田真理子さんに興味があり、どんな本を翻訳してみえるのかと読んでみた。大人も読める絵本。
*****以下アマゾンより
毎日、朝食をとりながら、おじさんは新聞を読む。
そこには、全身がふるえあがるような記事もあり、おじさんは不安でたまらなくなる。
あるとき、口をひらくとこんな言葉がとびだした。
「なにか、わたしにできることは?」
おじさんのなかで、なにかが変わりはじめる…
うつの世界にさよならする100冊の本 寺田真理子
寺田真理子さんは様々な事情でうつ状態になり、精神安定剤を飲みながら働いていたが、とうとう退職。療養する日々の中で、本を読むことによってうつを克服。その体験から、うつから抜け出すための100冊の本を紹介。
どんな本が載っているかというと、写真集、画集、谷川俊太郎の詩集、掃除、オーラソーマ、タロット、エッセイ、うつ脱出法、実用書など。自己啓発書、ノウハウ、エッセイに関する本が多く、小説は少ない。スピリチュアル系も少しはある。100冊のうち、私が読んだことがある本は4冊しかなかった。
興味の湧いた本も何冊かあり、読んでみようと思う反面、この人の本は絶対読まないと思う本も何冊かある。紹介されている本を読めばうつが克服されるかというと、読む人によると思う。ちょっと難しいなと思うのは、非二元の教えを理解すると、自己啓発本の大半が役に立たなくなってしまうということ。それでも気分的に落ち込むこともある。それで何か読みたくなる。何を読むか? ここに紹介された本の中には非二元の教えに沿うような内容の本もあると思うが、それは読んでみないとわからない。
ここに紹介された本を読むことが重要ではなくて、本を読むことによって、うつや心の不調を脱することができるという点が重要。私もたくさんの本に助けられたし、これからも本を読んでいく。何を読むかは、自分であれこれ読んで見つけるしかないと思う。
本をあれこれ手に取って、なんとかしようと思い始めたら、もう一歩脱出に近づいたということなのだと思う。
この本の最初の30ページは寺田さんの体験談やカウンセラーの方たちのコラムになっていて、それがすごく参考になった。また、途中ところどころで寺田さんのエッセイがあり、それがうつから抜け出すヒントになると思う。